英語の母音は日本語と違うので発音するのに苦労している人も多いでしょう。
「アイウエオ」は数も少なくて発音のしかたも割と単純です。それに比べて英語の母音は数が多く、発音のしかたが難しいものも多いです。
この記事ではまず英語の発音を上達させる方向性について考えていき、そのあとに発音するのが難しい英語の母音を8つに厳選してそれぞれイラスト付きで解説していきます。
記事の内容
自分の英語を聞きとってもらうには
英語を使う目的はコミュニケーションですので、相手に自分の英語が伝わらないと意味がありません。
ですので相手にとって聞きとりやすい発音を目指す、という心がけで勉強するのがいいかと思います。
気持ちだけでは発音は上達しないので、具体的にどうすれば相手に自分の英語を理解してもらえるかを考えます。
アクセントの母音と子音が重要
英語には多くの音がありますが、英語を聞きとる場合には単語の子音とアクセントの母音さえわかればだいたいどの単語を言っているのかが分かります。
そして英語の音には日本語に近い音もいくつかあります。
なので日本語との違いが大きい音(発音が難しい音)を練習すれば聞きとってもらいやすくなるでしょう。
もちろん似ている音でも違いがあるので、それらも練習しておけばさらに聞きとりやすいきれいな英語の発音にできます。
今回は母音について書いていくので、まずは英語にどのような母音があるのかと、その中でもどれを特に練習する必要があるかについて解説します。
難しい英語の母音
まずは英語の母音がどのくらいあるのか確認しましょう。下の図はIPAという英語の発音の表記のしかたをもとにしたものを、さらにいくつかのカテゴリーに分けたものです。
単母音 | 二重母音 | |||
---|---|---|---|---|
短い音 | 伸ばす音 | ɪで終わる音 | ʊで終わる音 | rで終わる音 |
ɪ | i: | ɪə (ɪr) | ||
ʊ | u: | ʊə (ʊr) | ||
ɔ: (ɔ:r) | ɔɪ | əʊ | ||
ə | ɜ: (ɜ:r) | |||
ɒ | ɑ: (ɑ:r) | aɪ | aʊ | |
e | eɪ | eə (er) | ||
ʌ | ||||
æ | ||||
注:()はアメリカ発音
この中で特に難しい・気を付けないといけない母音を以下の8つに厳選しました。
- 【æ】
- 【ɔ:】【ɔ:r】
- 【ə】
- 【ɜ:】【ɜ:r】
- 【ɑ:】【ɑ:r】
イギリス・アメリカ発音でわかれるので、実質5つとなります。
これらは日本語の音と特に違う・難しい音なので、まずはこれらの発音を上達させるだけでも英語の発音がかなりよくなるはずです。
もちろんこれらだけを練習してもまだ通じないことがあるでしょう。あくまでも特に厳選した母音なので、他の母音のせいで英語が通じないということもありえます。
なのでこの記事の最後にほかの母音の練習方法を書いた別の記事へのリンクを張っておくので、練習に利用してください。
今回はこの厳選したとくに難しい母音8つを日本語の母音との違いに注目しながら練習していきます。
母音の発音を練習する
【æ】:「e + a」の発音
まずは独特で発音が難しい母音である【æ】の音から解説します。この母音が使われている単語は「apple」や「stand」などがあります。
日本語の「ア」と比べられることが多いですが、発音のしかた・音ともにかなり違うので練習が必要です。
うまく発音するためには「口の動き」とそれに伴う「音の変化」が大切になります。発音のしかたは以下の通りです。
- 発音は「air」の発音を縮めた音に近い
- 口を横に広げて【e】を発音して、音を出しながら口を縦にあけて【ɒ】の音を出す
- 【e】と【ɒ】の音のつながりが途切れないように注意する
【e】の口の形(横に広げる)↓
【ɒ】の口の形(縦に開ける)↓
「stand」=「stænd」で【æ】の音を確認してみましょう。
【æ】は2つの音が合わさった母音なので、音を少し伸ばしてしっかりと発音するときれいな音になりやすいです。
あとは思っているよりもさらに大きく口を(横と縦に)開けることが重要です。
【ɔ:】と【ɔ:r】:口を前に突き出して発音
次に「オ」と比べられやすい【ɔ:】(イギリス発音)と【ɔ:r】(アメリカ発音)の音です。発音記号に”:“がついているので伸ばす母音となります。
【ɔ:】はイギリス発音での「talk」や「chalk」などに使われる母音です。
発音のしかたは以下の通りです。
- 音は「オ」に似ているが、口を前に突き出して大きく縦にあける
【ɔ:】の口の形(前に突き出して大きく開ける)↓
アメリカ発音である【ɔ:r】の場合は、以下のように発音します。
- 【ɔ:】のあとに口を元に戻し、同時に舌を奥へひっこめて先のほうを少し立てた状態で【r】の音を出す(ぼやけた「ア」のような音に聞こえる)
- 舌を引っ込めて立てたら、その状態で止めて動かさないようにして音を出す
【ɔ:r】の口の形と舌の位置・形↓
【ɔ:】と【ɔ:r】も思っているよりも大げさに口を大きく前に突き出して開ける必要があります。
【ɔ:r】のように【r】があると、そのぶん舌の位置と形をつくる必要があるのでそのぶん難しいです。
「talk」=「tɔ:k」で【ɔ:】の音を確認してみましょう。
さらに「door」=「dɔ:r」で【ɔ:r】の音を聞いてみます。
【ɔ:】と【ɔ:r】の違いがよくわかると思います。自分が習得したい方の音で練習していきましょう。
【ə】:「ア」だと強すぎる
続いて「ア」と表記されやすい母音の【ə】です。
この母音はちょっと特殊で、基本的にアクセントではない母音がこの音で発音されることが多いです。スペルの通りに読もうとすると間違った発音をしてしまうのがこの【ə】です。
単語では「about」などで使われます。【ə】の発音のしかたは以下の通りです。
- 口を自然に少しだけ開いた状態をキープ
- 「ア」になりきらないこもった音をだす
【ə】の口の形(自然に少し開いた状態)↓
「about」=「əˈbaʊt」で【ə】の音を聞いてみます。
実はこの音の発音は一番簡単なのですが、英語のスペルで発音を思い込んでしまう人が多いので難しい、というよりは間違えて発音してしまう人が多い母音です。
たとえば「university」という単語を発音記号にすると「ˌjuːnəˈvɜːsəti」となり、【ə】が2つも入っています。「i」の部分が【ə】で発音されるようになっていますが、スペルで判断してしまって「i」で発音する人が多いです。
そしてこの思い込みのせいでリスニングでも音を勘違いしてしまう人が多いのが【ə】です。
【ɜ:】【ɜ:r】:【ə】を伸ばして舌をひっこめる
つぎは【ɜ:】(イギリス発音)と【ɜ:r】(アメリカ発音)です。
これらも「アー」のようにカタカナで置き換えられることがありますが、音と口の形がかなり違うため日本人にとっては難しい母音です。
「earth」や「curve」などの単語に使われる母音で、発音のしかたは以下のようになります。
- 【ɜ:】:【ə】と同じ音・口の形で、舌を奥にひっこめた状態で音を出す
【ɜ:】の口の形↓
「earth」で音を確認しましょう。
- 【ɜ:r】:【ɜ:】の発音で、舌の先を立てた状態で音をだす
【ɜ:r】の口の形と舌の位置・形↓
同じく「earth」で音を確認しましょう。アメリカ発音の【ɜ:r】が、舌の位置の違いによって【ɜ:】と違うことが分かると思います。
【ɑ:】【ɑ:r】:「アー」だと不十分
最後の発音が難しい母音として【ɑ:】と【ɑ:r】を解説します。
これらは「park」などの単語で使われる音で、【ɑ:】がイギリス、【ɑ:r】がアメリカ発音となります。
【ɑ:】と【ɑ:r】の発音のしかたは以下の通りです。
- 【ɑ:】:音は「ア」に似ていますが、「ア」よりもかなり大きめに口を縦にあけた状態で発音する
【ɑ:】の口の形(縦に大きく開ける)↓
「park」で音を確認しましょう。
- 【ɑ:r】:【ɑ:】と同じように発音し、舌をひっこめて先を立てた状態で【r】の音を付ける
【ɑ:r】の口の形と舌の位置・形↓
「park」で音を確認しましょう。【ɑ:r】は舌の位置の違いによって【ɑ:】と違うことが分かると思います。
【ɑ:】と【ɑ:r】はとにかく口を大げさに縦に開けることがきれいな発音のために重要となります。しかしこれができない(知らない)人が多いので、難しい母音として解説しました。
まとめ
今回の記事では英語での発音が難しい母音について解説しました。記事をまとめると以下のようになります。
- 相手にとって聞きとりやすい発音を目指すべき
- 単語の子音とアクセントの母音ができれば聞きとってもらいやすくなる
- 難しい母音は以下の8つ(イギリスかアメリカ発音に分けると実質5つ)
- 【æ】
- 【ɔ:】【ɔ:r】
- 【ə】
- 【ɜ:】【ɜ:r】
- 【ɑ:】【ɑ:r】
さらに発音をよくするためには当然ほかの母音の練習も必要です。
↓の記事にてすべての母音の発音のしかたを解説しているので、練習用に使ってください。
英語の母音を日本語の母音にあてはめていませんか?これらはまったくの別物で、どのように発音するか勉強しないとできるようにはなりません。この記事で英語のすべての母音の発音方法をイラスト付きで詳細に解説しています。これを読みながら練習すれば簡単に発音の矯正ができます。サンプルの音を聞きつつ自習してみてください。
英語の発音に関しては正直に言って子音のほうが難しいです。なぜなら
- 子音のみで発音するということが日本語にはない
- より複雑な発音のしかたが多い(舌や歯も重要になってくる)
- 数が多い
しかし英語の発音は子音ができなくてはまず通じません。これはネイティブは子音とアクセントの母音で聞きとりをしているためです。
なので子音の練習も母音と同様大切になります。
下の記事では子音の発音を網羅した記事になっているので、練習用に使ってみてください。
英語の子音の発音方法を詳しくイラストつきで解説しています。僕が学んで実際に使っている発音方法で、海外でのコミュニケーションに使うためのコツと注意するポイントがたくさん書いてあります。この記事を読んで練習していけば子音の発音をネイティブレベルまで向上できるはずです。