「earth」などで使われる発音記号の母音である「ɜ:」(イギリス発音)とか「ɜ:r」(アメリカ発音)は日本人のほとんどが苦手にしています。
とくに舌がうまく回らないと言う人が多いですが、舌を動かしながら発音するというよりは先に形をつくって動かさずに発音することが重要です。
また「ə」は実はかなり重要な音で日本語訛りから脱却するためのカギの1つでもあります。さらにこの音がどういった発音と役割をもつのかを知ることでリスニングの上達にもつながります。
この記事ではこれら「ə」「ɜ:」「ɜ:r」の発音のしかたとカタカナ発音から抜け出す方法について解説ていきます。
記事の内容
「ə」「ɜ:」「ɜ:r」の発音のしかた
まずは「ə」と「ɜ:」(イギリス発音)の発音のしかたです。
単語の例 | 音声 |
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at [ət] | |
bird [bɜ:d] | |
「ə」と「ɜ:」の発音の違いは音を伸ばすかどうかだけです。ちなみに「at」は強調する場合には「æt」になるので気をつけましょう。
「ɜ:r」(アメリカ発音)の発音のしかたは似ていますが舌の形が変わります。
単語の例 | 音声 |
---|---|
bird [bɜ:rd] | |
このように「ɜ:r」は舌の位置と形が異なります。アメリカ発音でしか使わないのでイギリスやオーストラリア発音を学びたいという人は必要ないです。
ただしどちらの発音だろうと通じるので好きなほうを練習すればいい、というのが僕の意見です。
発音のポイントは
これらの点に気をつければ安定してきれいな音で発音できるようになるはずです。
「ə」の発音のルールと効果
「ə」をはっきりした音にしないのがポイントと書きましたが、その理由はこの母音がアクセントではないことを伝える役割をもつからです。
たとえば「about」という単語の発音記号をみてみます。
となっており「ʌˈbaut」や「æˈbaut」ではありません。
この時に見てほしいのはアクセントの母音が「au」であって「ə」にはないということです。
「ə」はアクセントではない母音として使われて、そのおかげでどの単語を言ったのかが相手に通じやすくなります。
ただし「ɜ:」と「ɜ:r」はアクセントとしても使われるので混同しないように注意です。
カタカナ発音からの脱却
「ə」について深く解説しましたが、この音を「ア」と読むことでカタカナ発音になってしまいます。
逆に言うと正しく「ə」の音をだせれば一気に英語の発音がレベルアップします。
意識するべきは以下の2点です。
矛盾して聞こえますがこのアクセントではないということが英語の聞きとりには重要です。
日本語ではアクセントでない母音の発音が変化するようなことはありませんが英語ではこの「ə」を使いこなさないとネイティブに聞きとってもらえません。
そして自分が聞く立場出会った場合にはこの「ə」の音と役割を知っておかないと聞きとりが上達しにくいです。なぜなら日本語のようにネイティブもすべての母音をはっきりと発音すると頭のどこかで考えてしまっているからです。
単語で練習
最後に「ə」「ɜ:」「ɜ:r」の3つを単語を使って練習してみましょう。
おさらいですが「ə」はアクセントではないということを意識しましょう。
「ə」を含む単語 | 発音のコツ |
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away [əˈweɪ] | 「ə」は口が少し空いた状態で力の抜けた音、そのあとに口をおちょぼ口にして前に突き出し、口を引きながら「w」を発音して口を横に広げながら「e」を発音。最後に横に広げた口をもとにもどして「ɪ」。「weɪ」を伸ばして発音するようにするとアクセントがわかりやすい。(「w」発音の記事を参照) |
adapt [əˈdæpt] | 「ə」でささやかに音をだし舌を前歯の裏・歯茎ではじいて「d」。そのあとに口を横に広げてから縦に開ける動きで「æ」を発音して「p」を口を閉じてはじいて発音して最後に舌を前歯の裏・歯茎ではじき「t」。「æ」を伸ばすようにして発音して最後の「t」もしっかりと発音するのがポイント。 |
conditional [kənˈdɪʃənəl] | 長いので「kən」「ˈdɪʃə」「nəl」の3つに分解。「kən」は「kn」になるくらいに「ə」をムシして発音(舌を口の奥ではじいて「k」すぐに舌を前歯の裏・歯茎につけて「n」で舌はつけっぱなし)。「ˈdɪʃə」で前歯の裏についている舌をはじいて「d」口を少し縦に開けて「ɪ」歯を閉じて口を前に突き出して「ʃ」を発音。アクセントの「ɪ」を伸ばして「ə」はほぼムシして問題なし。「nəl」で舌を前歯の裏・歯茎につけてはじいて「n」そしてすぐにまた舌を前歯の裏・歯茎につけて「l」(舌はつけっぱなし。「ə」は発音しなくて良し) |
mystery [ˈmɪstəri] | 「ˈmɪs」と「təri」に分解。口を少し強めに閉じてからはじいて「m」そのまま「ɪ」の音につなげて「s」を口を横に広げて歯を閉じて発音する(母音が入って「ス」にならないよう注意)。「t」で舌を前歯の裏・歯茎ではじきささやかに「ə」の音をだしてすぐに「ri」を舌を口の奥にひっこめて舌先を立てて発音する。「ミステリー」のように「teri」にならないように「tri」くらいの気持ちで発音する。 |
「ɜ:」「ɜ:r」を含む単語 | 発音のコツ |
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earth [ɜːθ / ɜːrθ] | 「ɜː」を口が自然に開いた状態で伸ばして発音して最後に「θ」を舌を歯の間にいれて発音する。「ɜːr」は舌を口の奥にひっこめて舌先を立てた状態を維持して音をだす。(「th」発音の記事を参照) |
stir [stɜː / stɜːr] | 「s」は口を横に広げて歯を閉じた状態で息をはき「t」で舌を前歯の裏・歯茎ではじく。そのあとに口を少し開けて「ɜː」もしくは「ɜːr」につなげる(「s sh」発音の記事を参照) |
person [pɜːsən / pɜːrsən] | 「p」は口を閉じてからはじいて音をだし「ɜː」もしくは「ɜːr」につなげる。「s」で口を横に開いて歯を閉じて発音して「ə」はムシして「n」を舌を前歯の裏・歯茎につけて発音(舌はつけっぱなしにする)(「m n ŋ」発音の記事を参照 |
learn [lɜːn / lɜːrn] | 「l」は舌を前歯の裏・歯茎ではじいて音をだし「ɜː」もしくは「ɜːr」につなげる。最後に舌を再び前歯の裏・歯茎につけて「n」を発音(舌はつけっぱなしにする)(「r l」発音の記事を参照) |
heard [hɜːd / hɜːrd] | 「h」は口が少し空いた状態で息をはいて音をだして同じ口の形のまま「ɜː」もしくは「ɜːr」につなげる。最後に舌を前歯の裏・歯茎ではじいて「d」(「h」発音の記事を参照) |
thirty [θɜːti / θɜːrti] | 「θ」は舌を歯の間にいれて奥に引くとともに音をだして「ɜː」もしくは「ɜːr」につなげる。最後に「ti」で舌を前歯の裏・歯茎ではじいて発音する |
「ə」はどれもアクセントではないことがわかると思います。カタカナの「ア」のように発音してしまうとアクセントに聞こえてしまうので気をつけましょう。
「ɜ:」は舌を使わないぶん楽ですが慣れていないと発音しにくい音です。ほかの音とのつなぎがスムーズにできるように練習しましょう。
「ɜ:r」はかなり難しいと思います。まずは「ɜ:r」だけで正しい発音ができるようになってから単語で練習したほうが無難です。長い単語は一気につなげて発音せずにいくつかのパーツに分解して練習するとうまくいきやすいです。
まとめ
この記事では「ə」「ɜ:」「ɜ:r」の発音のしかたと役割について解説しました。内容をまとめると以下のようになります。
- 「ə」と「ɜ:」の発音は以下のステップでおこなう
- 口が軽くあいた状態にする(舌は自然な位置においておく)
- 「ア」になりきらない音をだす(ゾンビのうめき声みたいな音)
- 「ə」は短めに「ɜ:」は伸ばして発音する
- 「ɜ:r」も同じように発音するけど舌の形が違う
- 舌を奥に引っ込めて舌先を立てた状態にしてキープ
英語の発音において「ə」は重要な役割をもっているのですが、この音について知らずにリスニングをしている人が多いです。
まずは自分で発音できるように練習して、この音の役割を理解して話す・聞くようにすればスピーキングとリスニングの両方の上達につながります。
「ɜ:」と「ɜ:r」はアクセントとしてもよく使われる音なので口や舌の形を意識しながら練習していつでもできるようにしておきましょう。
発音記号もふくめて英語の発音の勉強法について下の記事で手順を紹介しているので興味があれば参考にしてみてください。
英語学習でも最も費用対効果が高い発音ですが、まずは発音記号をできるようにし、シラブル・単語・フレーズ・英文と段階的に練習していきましょう。あとは会話で実践しながら調整していけばOK。かなり即効性があり聞き手も喜んで自分の英語を聞いてくれるようになりますよ^^